黒い雨地域拡大の申し入れ


広島県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会(高野正明会長)のみなさんが、県と市の担当者に要望書を提出しました。

2012年国は、県と市が、おこなった調査を否定する検証報告をまとめました。
調査結果は、これまで国が指定した地域の6倍の広い地域に黒い雨が降って、被害者が健康被害を訴えているという内容でした。
被害者の証言も聞かず、現地に赴くことなく「科学的根拠なし」として退けました。

降雨地域拡大に背を向けた国は、「健康不安がある」として昨年から相談事業を始めました。
県や市は、相談事業で集めたデータを何とか突破口にして、地域拡大につなげたいとしてきました。

しかし、相談会場に行った被害者のみなさんからは、「メモもとってもらえない」「話を聞くだけで、何の意味があるのか」
という失望の声が寄せられました。
この事業を受託した市は、「参加者が少なく、データが集まらない」とこぼします。

このやり取りを聞いて、なぜ、被害者が不信感を抱いたのか、福島での健康調査についてのNHK番組をみて考えました。


今夜、原発事故により福島県でおこなわれた32万人の子どもの健康調査について、NHkが特集をおこないました。

当初、子どもを連れた保護者が、検査に殺到したといいますが、二巡目になって受診率が大幅に低下したといいます。
番組では、国が「原発事故による健康被害はない。不安軽減のために調査をする」という目的で始めたため、検査への不信が広がり、結果、保護者の不安にも向き合うことができなかったのではないかと指摘しました。

健康被害はないという立場、不安軽減のためという目的であったため、黒い雨相談事業も同じように不信感をまねいたのではないでしょうか。

さて、今、被害者のみなさんは、残された時間はありません。
やむなく集団訴訟の検討に入っていますが、制度的に県や市を相手取り、訴えることになります。

来年は被爆70年。黒い雨地域拡大の一刻も早い政治的解決をはからなくてはなりません。
県や市は、政府に本気で迫ることが求められています。