社会保障について学びました

11月は、視察や研修会の参加で県外へ出かけることが多くなります。
第一弾として、大阪市で開催された自治体問題研究所主催の議員研修会に参加しました。


今回は、12月議会を前に社会保障についてみっちりと勉強しようと銘打って行われました。
記念講演は、立教大学の芝田英昭先生による「我が事・丸ごと」共生社会による社会保障の変容に、地方自治体・地域住民はどう関わるのかというテーマでした。
今年の5月国会で成立した「地域包括システムの強化のための介護保険法など改正」は、31の法律の渡るものでした。地域共生社会の名のもとに、地域で起きる子どもからお年寄りまでのさまざまな生活課題を地域住民が自助共助を基本に解決していくというものです。この講義を通して、国の方向は、社会保障の公的サービスを縮小したところに代替として地域住民に課題の解決を押し付けるものであること、私たちがめざすべき「地域社会での住民共同の運動や実践」は、同時に公的責任へ発展させていくものであり、本質的に違うということを示されました。


また、新たにもちだされた「共生サービス」は、障害者の介護保険優先という65歳問題(サービス減・負担増)の抜本的な解決にはならず、事業所を変えなくて済むだけのものであり、当事者の意見も聞かずに進められており、納得は得られないだろうと指摘されました。

さらに、来年から「総合的相談窓口」の設置を実施するとされていますが、自治体が地域に丸投げする危険性を指摘されました。市民の困りごとをたらいまわしにしないというワンストップの相談窓口は、私たちも求めてきたところです。先進的な取り組みをしている野洲市を視察しましたが、滞納・借金・離婚などの相談から生活再建・再生につなげていく窓口を市役所におき、市職員が中心となり、社協など地域と連携して解決しています。広島市ではどのように考えているのでしょうか。形だけできて似て非なるものにしてはなりません。 


子育て支援策の現状と課題」
講師 京都華頂大 藤井伸生先生

フィンランドネウボラを中心に、北欧での切れ目のない子ども・青年支援サービスについて報告されました。保健師助産師による担当制がとられ、妊婦の時からはじまり、子どもへの支援や家族への支援を行うとしています。初めてのかかわりを大事にしていて、様々な手当の支給にもからめて、ネウボラとつながるように工夫され、利用率は99%以上だといいます。
スライドで写真を見ましたが、それぞれの相談室を個室として確保し、保健師さんの社会的地位も高いと聞きました。

一方、日本では、妊婦は病院、就学前までは保健センター、就学後は児童相談所、青年期は精神保健センターなどで対応し、バラバラだという印象です。また、広島市の場合、乳児期の支援であるこんにちは赤ちゃん事業も、民生委員に委託です。講師は、公的保健師がきちんと配置され、担当制をとることが大切だと何度も繰り返して指摘されました。

さらに、一貫して切れ目なくやれることが大事だが、それまでは、それぞれの機関での連携が大事になります。日本では、この連携不足が様々な問題を引き起こしています。そのため、まず、問題に気付いた機関が、中心になって解決まで責任を持つことが大切だというお話もあり参考になりました。

「新しい国保のしくみと財政」を考える
講師 三重県津市短大 長友薫輝先生
   全国保険医協会 寺尾正之先生

来年から始まる国民健康保険の県単位化は、県が財政運営を担い、統一保険料率・統一ルールをめざすものです。この間、高すぎる保険料がさらに上がる試算が示されて、住民に不安と怒りのこえが広がっています。
結局、法定外繰り入れや小規模の保険者の負担が重いことを解消することは言われても、低所得で高齢者が多いのに、保険料負担が大きいという国保の構造的な問題を解決するものになっていません。講義の中でも、県単位化は、自治体同士の助け合いの制度にされることであり、保険料を抑制するためとして医療費の適正化と収納率の向上を競わされて、加入者を医療から遠ざける危険性や強引な保険料の取り立てに結びつくことの心配が増すことが懸念されると指摘されました。あらためて、自治体が保険者として住民の医療や・健康にどう責任を取るのかが問われます。
そして、この間、公費の投入が、保険料の値上げを抑えている実態からみても構造的問題を解決する一番の手立てであることは明らかではないでしょうか。



講義の中で印象的なお話は、
厚生労働白書のコラムでも、OECDの調査で社会保障の充実が、貧困と格差を是正するとの報告を指摘しています。とりわけ地方では、社会福祉は、経済波及効果や雇用創出効果に優れ、公共事業よりも効果があるといわれたこともあります。社会保障は無駄というような論は当たりませんという話は印象的でした。

本来、医療や介護は住民生活の基本的なインフラであり、医療費の節約は結果であるのに、抑制政策が目的化していることが指摘されました。

医療政策でいえば、イギリスなどのように税で賄う国もあり、社会保険の国でも窓口自己負担がないことも示され、窓口負担を無料にして入院費が減少したという毎日新聞の記事も紹介されました。子ども医療費無料化についても示唆に富む研修となりました。https://mainichi.jp/articles/20170905/ddm/012/040/054000c