今年は、憲法施行70年!

この連休中、憲法を特集した番組が放送されました。「押し付け憲法」を否定する内容など興味深いものでした。
NHK憲法世論調査によると 今の憲法を改正する必要があると思うか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が43%、「改正する必要はないと思う」が34%、「どちらともいえない」が17%でした。(改正する必要ありが20年前と比べ減少しています)

また、「戦争の放棄」を定めた憲法9条を改正する必要があると思うか聞きました。「改正する必要があると思う」が25%、「改正する必要はないと思う」が57%、「どちらともいえない」が11%でした。

憲法改正について、国民の意識は、とても機が熟したといえないのではないでしょうか?

ところが、 憲法記念日の5月3日、改憲団体の集会に寄せた安倍首相のビデオメッセージが、繰り返しテレビで流されました。東京オリンピック開催の2020年までに憲法をかえると宣言しています。

あまりに、唐突で違和感をもちました。

首相は、そもそも憲法99条で尊重義務を負う立場です。ましてや、憲法改正は、国会の発議によりおこなわれるものです。時期まで指定するなど越権行為ではないでしょうか。

それでは、憲法改正を党是とする自由民主党の総裁としての発言だというのかもしれません。しかし、その発言の中身を見ると自民党改憲草案になかったものです。一体、これまでの自民党内の議論はどうなるのでしょうか。

メッセージでは、改憲について、二つのことが示されました。

一つは、教育の無償化です。第26条は、義務教育としていますが、高等教育を加えるというものです。しかし、これに対して、反論が百出しています。
 憲法を変えなくても法律で無償化は進めることができる。問題は、どう財源を捻出するのかということだ。改憲より、国民投票の経費850億円をまわせば?との指摘もありました。そもそも、民主党政権がおこなった高校無償化に反対したのは、自民党ではなかったのかとの声があがる始末です。メッセージの直後に、維新の会が絶賛していましたので、この党へのラブコールだったのでしょう。

二つ目は、本命の憲法9条です。 今回示されたのは、9条をそのまま残し、続いて自衛隊を明記して、名実ともに合憲とするといいます。これには、新しい項目を加える形をとることで「加憲」を唱える公明党からも肯定的な反応がありました。

憲法9条は、①項で「戦争放棄」②項「戦力不保持」「交戦権否認」をうたっています。①は、国連憲章にもある侵略戦争を否定する平和主義の考え方で、世界のスタンダードです。憲法9条は、さらに②が盛り込まれることで、世界に類を見ない徹底した平和主義の条文だと評価されています。

もともと、自民党改憲草案では、①の「戦争放棄」は残すが、②で自衛隊国防軍と明記するとしています。ところが、安倍首相の案は、②の戦力不保持と交戦権否認を残して自衛隊を明記するというもので、明らかに相反する条文となり、憲法に新たな矛盾と混乱が生じてしまいます。


ところで、 実際に存在する自衛隊憲法に明記するだけならいいではないかと思うかもしれません。

確かに自衛隊憲法9条は矛盾しています。

そのため、自衛隊は、急迫不正の侵害の場合対処する必要最低限の範囲の「実力組織」であり、②でいう「戦力」ではないと説明されてきました。長く専守防衛を国是とし、米国にもとめられて海外へ派兵しましたが、戦闘地域に行かない、武器を行使しないと歯止めをかけていました。
しかし、2014年、自国が攻撃されていないのに、他国を守る集団的自衛権を限定的とはいえ容認する大転換を行い、憲法学者がこぞって違憲と批判しました。

自衛隊憲法に明記すれば、憲法上でも集団的自衛権は無限定に行使できる、侵略戦争以外は何でもOKとなります。

先ごろ、自民党は、北朝鮮を想定して「巡航ミサイル」の保持など、敵基地攻撃能力について検討をはじめたと報道されました。米国が、サリン疑惑でシリアの基地を先制攻撃した際に使用されました。こうした先制攻撃の戦力を保持しようとすれば、何兆円もの莫大な予算がかかるといわれています。軍拡競争による危険なチキンレースはやめるべきです。

9条の歯止めがあったから、自衛隊員が一人も殺し殺されることがなかったのです。平和国家としての歩みを根底からくつがえして、海外で戦争する国にしていいのか、この事が問われています。