議員研修に参加してきました。

15,16日、神戸市で行われた自治体問題研究所主催の市町村議員研修会に参加しました。
かねてから予定していたものです。
1日目は、愛知大学教授の西堀善久夫教授による「自然災害への備え〜事前復興政策と支援力を考える〜」です。

1995年の阪神・淡路大震災を皮切りに、この国は10回も大きな地震に見舞われ、水害や火山の噴火なども加えれば、「災害列島」と呼んでもけっして過言ではありません。
こうした災害による被害は、大きな損失となり、社会的経済的な力を弱め、社会的・経済的弱者に集中します。
そのため、自然の変動は変えることができませんが、被害を少なくする社会の在り方を考えていかなくてはなりません。そうした中で、災害が起きる前に復興計画を準備する「前復興計画」という考え方を重視すべきだというのが、この話の中心点でした。この間の復興事業の問題は、神戸市長田地区の再開発にみられるように、道路や建物は復興できたが、住民の生活の復興が遅れるというものでした。復興を急ぐあまり、机上の役所の計画を優先し、住民のかかわりや意思が後回しにされてきたことが要因です。
そこで、事前に住民がかかわる復興計画を作成しておこうというのが、前復興計画だといいます。


2013年国土強靭化基本法では、大型公共事業に偏重した実際の在り方は問題ですが、地域強靭化計画をすすめることをもとめています。くらしや経済を守ることが国の責任としたことや脆弱性評価を行い72時間以内に集中的に対応するというものです。
これらの点について、講師は、地域経済を復元させることを目的とすることは意義があるが、72時間以内の対応については、自治体ではもっと長いスパンで考え、計画的にすすめるべきと指摘されました。
こうした観点からの留意点や事前に備えるべき目標を具体的に示されて、事前復興とは、日ごろの地域のまちづくり運動とまちづくり計画のなかにあり、その総合的なものが自治体の事前復興計画であると結ばれました。
また、自治体が、被災地を後方支援する支援力も強め、こうした力も借りて復興の助けとすることの重要性を説かれました。すべて自前で復興するというこれまでの考え方からの脱却を提起された点も印象深いものでした。


二日目は、「中小企業を軸とした地域経済振興の在り方」について、慶応大学の植田浩史教授のお話でした。
中小企業振興条例の制定を提唱している先生ですので、自治体の中小企業振興にどのように役立つのか具体的な事例をもとに話されました。

中小企業は、企業数の9割、雇用の7割を占めています。
グローバル経済の激化の中、中小企業が減少し続けていることが、雇用の縮小、経済活動の停滞、生活を困難にする一つの要因になっています。1999年中小企業基本法の改正で、国が中心だった中小企業振興に対して、地方自治体の責務が加わり、強化されました。国の下請け、企業誘致一辺倒だった自治体の政策が見直しを迫られました。
そうした中で、全国で199の自治体で、振興条例が制定されています。
その意義として?自治体組織内部で中小企業振興が明確に位置づけられること、?外部に自治体の姿勢を明確にできること?首長・担当が変わっても姿勢が変わらないなどが挙げられました。

なにより、中小企業が強くなることで地域が強くなれるのであり、中小企業の努力とそれを支える地域の存在の両者が必要だと強調されました。

植木先生の話のあと、中小企業振興条例を制定している大阪八尾市の藤原義春社長のお話を聞きました。裸一貫で従業員30人の会社に成長させた体験は、人間ドラマとしても大変興味深いものでした。
その中で、振興条例を通して、様々な取り組みを行うことで、中小企業と行政と地域をつなぐ絆ができたと発言されました。魅力的な社長さんで、日本を元気にするのは中小企業だという使命感にあふれる姿に脱帽しました。